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想像力こそが差別克服への鍵?アメリカのプロが語るズートピアの感想

妹に強く勧められて、ズートピアを鑑賞しました。

アメリカで家族もなしに、18歳の頃から15年間一人暮らしをしてきた私は、

最後のジュディのスピーチの部分でこみあげる気持ちが抑えられずに、

不覚にも、思わず涙をこぼしてしまいました。

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実際に人生の半分近くをアメリカで過ごした米国社会の専門家が、

ズートピアで描写された人種差別と偏見の根本問題を全力で語ります。

映画が苦手な私が絶賛!

そもそも、前回の記事で詳しく述べたように、

私は映画が苦手で、あんまり好んで観ないんですよ。

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そんな私が人に勧められたからと言って、映画を観てみようと思ったり、

ましてや、観た映画を気に入って、感想を書いてみようというのは

私にとっては、何年に一度かの大事件です。


でも、それだけこの映画は、素晴らしかったです。

私の人生で鑑賞した映画のトップ3に入ると思います。


まさか「紋切り型のステレオタイプ量産映画」と馬鹿にしていたディズニー映画に

泣かされる日が来るなんて、想像したこともなかったです(笑)

娯楽性と社会性を両立

私が思うこの映画の最も優れている点は、

娯楽性と社会性を、かなり高い次元で両立させていることです。


極端に言えば、何も考えずに可愛い動物を愛でて楽しむこともできるし、

反対に、現代世界の直面する社会問題に対して深い思索に誘うこともできる。

人種問題の最良の教科書?

この映画は、人種問題の最良の教科書の一つではないかと思う。


アメリカには、人種差別を扱った山ほどの映画があるが、

実写版の映画の限界を、このアニメを観て感じられた。


実写映画だと、どうしても演じている俳優が

白人か黒人か(またはそれ以外か)で気になってしまうが、


ここまでぶっ飛んで「動物の世界」という設定にされると

自由な想像力が働く。

想像力の欠如が人種主義を生む

私は人種問題への根本的な解決法は、

結局は「どれだけ他人の身になって想像できるか?」という

想像力を養うことだと思う。


私がアメリカの「リア充」の若者が苦手なのは、

彼らが「白人以外の世界」「英語を母国語としない人」に対する

想像力が欠如しているからだ。


彼らは決して悪人ではなく、悪気もないところが、

人種を取り巻く状況を、さらに複雑にしている。

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自分と違う人間を受け入れられるか?

この映画で印象に残った箇所は、ニックとジョディの最初の出会いの時に、

象のアイスキャンディーを買うのを手伝ったジョディに対して、ニックが


「君みたいに種族の違いにこだわない人に初めて会った」という意味で、

"someone like you who is not patriotizing" という言葉を使ったのが心に残った。

嫌韓・嫌中論は人種主義と同じ

patriotizingは、patriotism(愛国主義)になるという意味だ。


人種主義の話をすると、たいていの日本人は「対岸の火事」のように、

「自分には、関係のない」という態度をとるが、

私は、嫌韓論や嫌中論も人種主義と同じようなものだと思う。

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差別意識を克服が急所

以前の記事でも詳しく語ったが、私は一人一人の人間の心の中の差別意識の克服が

これからの世界の平和と社会の安定のための急所だと思う。

私はアメリカで家族もなく、15年間一人暮らしをして、

人種差別や外国人差別を、嫌というほど体験した。


社会の少数派として虐げられる哀しみや怒りは、

経験した者にしか分からない。


だから私自身は、どんな時も、いかなる理由があっても、

誰人たりとも差別せずに、同じ人間として接したいと思う。

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嫌韓・嫌中論を聞くと悲しくなる

ここだけの話だけど、私はブログで知り合った人とかが、

「韓国や中国が嫌い」って話をすると、すごい悲しい気持ちになります。


別に韓国や中国の肩を持つ訳じゃなくて、

ただ日本人の韓国人や中国人への反感や差別意識は、


私がアメリカに15年間住んで嫌というほど体験した

人種差別や外国人差別と根っこが同じもののように感じるからだ。

日本と韓国や中国との間に、どんな歴史や社会軋轢があったとしても、

日本人や韓国人や中国人である前に、みな同じ人間である。


「日本人として」としか物事を見れず、

「同じ人間として」の観点を持てない人は、

自分で自分の視野を狭くしている可哀想な人だなと思う。

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心の中の差別意識の克服

そういう面で、ジョディの心の中の差別意識の克服という

ジョディの成長を描いたズートピアは、

子供向けに単純化されているが、内容は深いと思う。


印象に残ったシーンは、冒頭のジョディの初出勤の際に、

父親から渡された「キツネ撃退スプレー」を一度は必要ないと置いていくが、

すぐに戻って「一応念のため」に持っていくことにしたことだ。

自分と違う人間は怖い

私はここの部分のジョディの気持ちに、すごく共感できる。

「いくら人間は平等だ!」と頭では思っていても、

これまで虐げられてきて傷つけられた過去の記憶は消えない。


自分と違う人間は、最初は理解に苦しむ分、

やっぱり怖いし、簡単には信頼できない。

揺るがない信念と精神の力

それはある意味、自分の身を守る「保身」から解放された時に初めて

「頭の中の理想論」ではなく「全人格をかけた行動」として肉薄できる気がする。


マハトマ・ガンジーが

「非暴力は、臆病者の隠れ蓑ではなく、強者の武器である」と言ったのは、

自己保存の動物的欲求を乗り越えて、揺るがない信念と精神の力に裏付けされた

無私の献身の行動が必要だからだと思う。

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「自分は未完成の人間だ」という意識

という訳で、私も全然発展途上で、まだまだの人間ですが、

「差別意識の克服」という課題には、


「克服されるべき悪は、外部というよりまず自分の内部にある」

という思想が必要になるので、

「自分は未完成の人間だ」という意識が不可欠ではないかと思います。

悪人を全員殺せば解決?

ユネスコ憲章にある「戦争は人の心の中で生れるものであるから、

人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」というのと同じですね。

国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ憲章)/The Constitution of UNESCO:文部科学省


「悪を外部に求める思想」だと、極論を言えば、

「じゃあ、悪人を全員抹殺すれば、世の中は良くなるんじゃん!」

ってことになるけど(笑)、スターリンやナチスの大量虐殺と大差ない。


以前の記事でも詳しく書いたが、「自分は悪くない」と思っている人間ほど、

安易に他人を攻撃する気がする。

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他人を攻撃する人間は臆病

自己肥大化妄想というか、自分の弱さと向き合えないで、

「俺は完璧なんだから、何か問題があるのなら、俺じゃなくて周囲が悪い」

みたいな感じで、自分を客観的に見つめられないタイプですね。


ただ、そういう人間は、表面的には傲慢で強そうに見えても

本質は臆病で、自分を守るために武装しているんだと思います。

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挑戦しつづける姿勢が大事

そういう意味で、主題歌「Try eveything」は、

「私はこれまで多くの間違いを犯してきたし、

これからもたくさん間違えるかもしれないけど、

たとえ間違えても、失敗しても、私は挑戦し続ける」

という前向きな姿勢を歌っていて、

この映画が訴えたいメッセージにぴったり合うと思います。


Shakira - Try Everything (Official Lyrics)

Frozenの日本語訳の違和感

正直「アナと雪の女王」(原題「Frozen」)の主題歌の「Let it go」よりも好きだ。


「Frozen」も良い歌ですが、あまりにも日本語の歌詞の訳が原文とかけ離れて

一人歩きしている感じがして、違和感があります。


FROZEN - Let It Go Sing-along | Official Disney HD

原題「Let it go」の意味

原曲の題名である「Let it go」は「(執着などを)手放す」

「あきらめて受け入れる」という意味なので、


それを「ありのままに」と訳すのは、

かなり原文からかけ離れた自由な意訳だと思います。


まあ、松たか子の歌声が、めちゃくちゃ可愛かったですけどね(笑)


『アナと雪の女王』松たか子が歌う本編クリップ映像

まとめ

以上、長文にはなりましたが、実際に人生の半分近くをアメリカで過ごした私が、

ズートピアで描写された人種差別と偏見の根本問題を全力で語りました。

少しでも参考になれば嬉しいです。

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