家畜とペット!漫画「百姓貴族」に学ぶ都会人と畜産農家の文化の違い
同じ日本人だとしても、都会で生まれ育った人間とそれ以外の人間は
越えがたい文化や感覚の違いがあるのではないだろうかと、最近考える。
「日本 vs. 海外」の危険性
以前の記事でも「日本 vs. 海外」の二分法の危険性について述べた。
日本以外の全ての国を「海外」と一括りにすることで、
各国の多様な事情を見落とす危険性があるし、
日本国内の中の豊かな多様性も見落として、
「画一化された日本(というか首都圏周辺のみ)」のイメージを
誤って広めてしまうことを心配するからだ。
文化や歴史の違い
以前の記事で、文化や歴史の違いを考慮しないで、
日本の捕鯨文化を一方的に批判する欧米の動物愛護主義者への違和感を述べて、
食文化や「何を殺して食べてよくて、何を食べてはいけない」というのは、
文化や歴史の違いが大きく、簡単に善悪を決めつけられるものではないので、
個人の価値観を一方的に押し付けるべきではないと書いた。
畜産農家は未知の世界
話を元に戻して、「何を殺して食べてよくて、何を食べてはいけない」という
「違う文化圏で育った違う価値観の人間」という意味では、
同じ日本国内の中でも、東京で生まれ育った私には、
漫画「銀の匙」で出てくる畜産農家の感覚は全く未知の世界だ。
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家畜とペットの愛情の違い
「美味しく育てよ」と愛情を込めて世話をして、
食べられるようになったら、躊躇なく殺すというのは、
ペット(愛玩動物)としてしか動物とは関わりを持たなかった私にとっては、
すごく不思議な感覚に思える。
http://www.glocallife.net/entry/2016/04/12/080000www.glocallife.net
狩猟と家畜の違い
ただ日本の獣肉食の歴史を考えると、
「狩猟で得た獣肉は良いが家畜を殺した獣肉は駄目」
「足が多いほど駄目(哺乳類>鳥>魚)」というタブーがあったらしいから、
日本の歴史文化では、「狩猟で狩って食べる動物(シカやイノシシ)」と
「家畜としての労働力の動物(牛、馬、犬、サル、鶏)」の間に
明確な区別があったのかもしれない。
家畜は家族?生きる貯蓄?
英語では家畜の総称は「livestock」と言う。
読んで字のごとく、生きている(live)貯蓄(stock)だという訳だ。
家畜を「家族の一員」と感じる日本人の歴史感覚とは、
また少し異なる気がする。
エッセイ漫画「百姓貴族」
そのような日本の中での文化の違いを教えてくれるのが、
「銀の匙」と同じ作者によるエッセイ漫画「百姓貴族」だ。
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北海道の畜産農家に生まれ育った作者自身の経験を赤裸々に綴っていて、
大変に面白い。
作者自身の自画像も牛だし、本当に牛が好きなんだなぁ〜と思う(笑)
詳しくは、こちらの記事もどうぞ。
百姓は貴族か?
一般的には重労働で儲けが少ない農家の仕事を
「貴族」と表現する自負にも、共感する。
私は実際に農家の仕事をしたことがないし、
その表現が適切かどうかは賛否両論あるだろうが、
私は「職業に貴賎なし」と考えているので、
どのような職種であっても、
自分の仕事に誇りを持っている人間は、
見ていて気持ちがいいし、尊敬の念が湧く。
本当に富める者は誰だ?
この漫画の作者が、北海道の実家の畜産農家の仕事を
「貴族」と表現したのは、作者自身が実家の仕事を
心の底から誇らしく思っている気持ちの表れではないかと思う。
ちなみに、この作者は畜産農家の子供たちが通う農業高校を
舞台にした「銀の匙」という漫画も描いている。
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英語で「銀の匙をくわえて生まれてくる」
(be born with a silver spoon in his/her mouth)は、
「裕福な家に生まれる」という意味の慣用句であるので、
「百姓貴族」と同じような自負を感じる。
都会人は謙虚たれ!
いろいろと屁理屈を述べたが、
現代の社会では私も結局は畜産農家の方々が育ててくれた
お肉や卵や野菜を食べているのだし、
これまで気づかずにいたが、すごく大事なことを教えてくれている気がする。
都会でどんなにお洒落な仕事をしていても、
私たちの生命の根幹である「食」の部分は、
畜産農家や漁業の方々に頼りきっているという現実を直視して、
謙虚に学んでいきたい。
まとめ(グローカルの視点)
私は自分のglocal (global+local) という立場から、
「日本国内にだって、文化の違いは山ほどあるし、
海外だって、それぞれ一人一人全然違う」ということを
訴えたいと常々思っていたので、
今回の「銀の匙」と「百姓貴族」で考えた
都会で生まれ育った人間と畜産農家の人間の文化の違いは、
大変に興味深かったです。
一読のすすめ
両方とも、これまでに気がつかなかった視点を気づかせてくれる漫画なので、
まだ読んだことのない方には、ぜひ一読をすすめたい。
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