2016年の米大統領選に見るアメリカ建国精神の行き詰まり
今回の記事では
今年の大統領選に見られる
アメリカの建国精神の行き詰まりについて論じたい。
アメリカの建国精神とは?
まず以前の記事から以下の部分を引用したい。
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米国の国民意識を構成する2つの要素
>政治学者のサミュエル・ハンチントン氏は最後の著書「分断されるアメリカ」(2004年)の中で米国の国民意識を構成する2つの要素に注目した。1つはアングロ・プロテスタントの歴史が残した遺産である。だが、今の米国には多くの文化的、宗教的伝統が混在しており、この遺産は必然的に薄れつつある。もう1つは米国という概念そのものだ。かつて歴史学者のリチャード・ホフスタッター氏の「一つであるという以外にイデオロギーを持たないことがわが国の運命だった」という表現で言い表したように。
- 作者: サミュエルハンチントン,Samuel P. Huntington,鈴木主税
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米国の信条(American creed)
>ハンチントン氏が「米国の信条(American creed)」と呼んだこの米国のイデオロギーを構成しているものは何か。その中心的な価値は3つ、平等主義、自由、個人主義ということになるだろう。米国の信条を構成するその他のおなじみの要素、つまり法の下の平等、機会の平等、言論・結社の自由、独立自尊、小さな政府、自由主義経済、政治的権限の分権・委譲はこの3つの価値に基づいている。
自由・平等・幸福の追求
18世紀半ば過ぎに起草されたアメリカの独立宣言では、
「自由・平等・幸福の追求」の3つを人間の天賦の権利として主張し、
この権利を守るために独立すると宣言している。
平等主義、自由、個人主義
ハンチントン氏によると、20世紀の米国のイデオロギーを構成しているものは
「平等主義、自由、個人主義」の3つの価値観だと言う。
個人主義から利己主義へ
キリスト教的規範が薄れ、世俗化が進んだ21世紀のアメリカでは
個人主義が利己主義に堕してしまっている。
アメリカでは基本的には社会福祉は、家族と教会に丸投げで、あとは自己責任だ。
スペインの哲学者の叡智
しかし私は、スペインの哲学者のオルテガ・イ・ガセットのこの言葉が好きだ。
「私は、私と私の環境である。後者(環境)を守らなければ、私自身も守れないのだ」
私は、私と私の環境である
仏教の縁起観にも通じるが、
「自分の周囲が幸せでなければ、真の意味で自分も幸せではないのだ」
という意味だと、私は解釈している。
日米のそれぞれの課題
それぞれの国の置かれている歴史・社会的状況によって、
取り組むべき課題は異なる。
日本では、息苦しいムラ社会から逃れる個の確立が急務だ。
アメリカでは逆に個の確立が行きすぎて、利己主義になっている。
日本とアメリカのそれぞれの課題を考えれば考えるほど、中道の大切さを痛感する。